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「カタルーニャ厨房 カサマイヤ」 [グルメ]

電車の窓から見える線路沿いの桜並木に見とれていて玉川学園前で降りるのを忘れるところだった。
なだらかな坂の上から眺めるその街には春の夕暮れが迫ろうとしていた。
坂を下り、少し路地に入ったところにその店はある。
扉を開けると印象的なタイル貼りのカウンターと女性シェフの笑顔が出迎えてくれた。
シェフとは30年ぶりの再会だったが、力みのない立ち姿が素敵な女性になっていた。
出される料理シンプルにみえて繊細。特に肉料理の塩加減は素晴らしい。
スペインのカタルーニャで修行したというシェフのスイーツは甘さを控えているが、それゆえにいくらでも食べられそうな逸品。
たのしく、おいしい時間をすごさせてもらった。
すっかり日が暮れてから店を出て、大通りとは反対側を見ると暗がりのなかに急坂とこんもりとした木々、大きな家の影が見えた。それはあたかも宮崎アニメに出てくる異界への入り口のようであり、店は大通りの明かりと坂の上の暗がりとのちょうど真ん中にあって世界と異界とを隔てる境界のようでもある。
その店の名は「カタルーニャ厨房 カサマイヤ」。
また、いずれ再訪したいと思う。

今里筋

仲良くしてもらっている不動産屋さんと忘年会。おいしいてっちりを食べてヒレ酒を飲んで、いい気分で店を出て、不動産屋さんの乗ったタクシーを見送った。冬空の下、今里筋で一人たたずんで信号待ちをしていると、向かいの昭和な長屋が目に入り、それでかどうかは分からないが何故だか甲斐バンドの「安奈」が口をついて出た。そのまま唄っているとどんどん声が大きくなり、通りかかる人が不審げに振り返るほど大きな声で歌っていたら、今度は涙がこぼれてきた。知らないうちにこんなところまで来しまった。そう思ったら、どんどん涙がこぼれてきたので、そのまま涙が乾くまでずんずん歩いた。

「喜嶋先生の静かな世界」森博嗣 [書評]

 テーマは大学で研究することの意味と師弟愛。(だと思う)
 
 主人公の結婚式で主人公の師がしたスピーチは師弟愛の結晶のようなものだ。(詳しく知りたい人は買って読んでね)

 他の人にはさっぱりわからないだろうけど、自分にだけは判る。自分にだけ届く言葉。それをもっと聞きたいと願う気持ち。

 教科書に書いてあることを分かりやすく説明してくれる先生は、いい先生だと思うけど、それだけでは師弟愛って生まれないんだろうな。

 今、大学生の人はもちろん、昔々に大学生だった人にもお勧め。恩師のことを思い出し、勉強したくなります。
 

 

「桐島、部活やめるってよ」浅井リョウ [書評]


 著者は早稲田大学の現役大学生

 体育会系と文科系の間に確実に存在する断層とそれに対する屈折した思い。何ものにも打ち込めない鬱々とした毎日。好きな異性へのまなざし。

 ここに書かれていることは、いつの時代の高校生も抱えている普遍的な出来事であり、私のようなオジサンの心にもちゃんと届く小説になっています。

 もう少し余計な装飾を削った方がいいようにも思いますが、好みの問題かもしれません。
 
 いずれにしろ、買って損のない本です。
 高校時代を思い出したい人は是非。

津村泰水「ブラバン」 [書評]

 高校時代の3年間は、たったの3年間だけど、10年分生きていた気がする。その時に起きた出来事は一生忘れられない。そのとき会った友人は今もずっと友人できっと死ぬまで友人だろう。
 でも、僕らはみんな高校卒業から既に20年以上の人生を生きてきた。明日をも知れぬ世界で苦難と悔悟にまみれ、なんとか生き抜いてきた。もうみんなあのときの自分じゃないかもしれない。それでも、ときどきは高校時代の気持ちを思い出し、自分を奮い立たせる。

 津村泰水「ブラバン」 高校のブラスバンド部を舞台にした青春とその20数年後の物語。
 
 あのときの気持ちを忘れちゃいけない。

吉田修一「横道世之介」 [書評]


 田舎から大阪に出てきたとき、街は肩パッドと金ボタンとスカーフ、ダブルのスーツが大量に溢れていた。
 僕は正直、どうしていいか分からなかった。友人が頼んだから自分も頼んでみたフォアローゼスをバーの片隅で舐めながら、喧噪を楽しむ人々と自分の間に深い川が流れていることを自覚していた。「何か違う。」

 そんな頃、田舎から東京に出てきた大学生、横道世之介の物語。
 バブルまっただ中の東京でまがりなりにも成長していく様子は、当時の等身大の学生を描いて楽しく、ときに深く考えさせられる。
 一気に読める快作。
 
 

「PIZZERIA ESPOSITO(ピッツェリア・エスポージト)」 [グルメ]


 事務所の近所にできたピザ屋さん。
 ナポリで修業した大胡哲平さんが焼くピザは絶品です。もちもちとトロトロの共演。
 いつも満員ですが、遅い時間に行って広島出身の大胡さんと広島弁で話しながら食べてます。
 
 は~バリうまいけえ、みんなも食べてみんさい。 

 http://www11.ocn.ne.jp/~esposito/

家族経営


 私の事務所周辺は官庁街なので、ネクタイ姿は多いけど買い物客や学生は少ない。
 そんな街では夫婦二人で切り盛りしている飲食店が多い。最近、チェーン店の牛丼、カレー、定食屋の類が増えたけれど、どうしても家族経営の温かみにひかれてしまう。
 ときには機嫌が悪かったり、ときには客が多すぎてテンパッていたりするけど、そんなときにはこちらが気をつかうこことも含めて、人と人の付き合いをしている感じがする。
 チェーン店の従業員の元気な挨拶と笑顔って、初めて来るお客さんにはいいんだろうけど、何度も行くようなその街の住人には不向きだと思う。少しは融通を利かせて「まいど」って言ってくれればまた行くのに。

 

ロックンロールナイト


 高校時代の友人が交通事故に遭い、両足を骨折したらしい。大事には至らない様子なのでほっと胸をなでおろす。
 別の友人は転勤を命じられて本社に単身赴任。重要なポストを任せられて奮闘している。ただ、痩せてきているが気がかり。
 亡くなった友人、音信のない友人、離れてしまった友人。
 40才になると不思議とみんなのことが気になり始めた。
 表題は大好きな佐野元春の名曲。
 

「一瞬の風になれ」 佐藤多佳子

高校生の陸上部員が主人公の青春小説。

放課後トラックを疾走する陸上部員はみんな寡黙で、目は前を見据えていて、なにか走りながら自分と対話しているような趣があった。
ストイックで孤独な自分との戦い。

そんなイメージだったが本書を読んで少しイメージが変わったかもしれない。特に400メートルリレーに関する描写は陸上の団体競技としての一面を教えてくれたと思う。
3部冊で長編だけど全体に読みやすく、すっと読める。
けど、少しさわやかすぎるかも。高校生男子はもっとモヤモヤしていて、汗臭くて、イヤラシイはず、と思うのは年を取った証拠か。



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